同じニュースなのに、なぜか感じ方が違う?メディアの『言葉の選び方』を知るヒント
日々のニュースに触れていると、「同じ出来事なのに、テレビで見た時と新聞で読んだ時、インターネットで見た時とで、なぜか印象が違うな」と感じたことはありませんか?
この印象の違いは、情報の内容そのものだけでなく、メディアがどんな「言葉」を選んで私たちに伝えているかによっても生まれます。情報過多の時代に、より深く、そして惑わされずに情報を読み解くためには、メディアごとの言葉の選び方を知っておくことが役立ちます。
この記事では、テレビ、新聞、インターネットの言葉の選び方の特徴と、それを知ることでニュースがどのように違って見えるのか、そして私たちが賢く情報を読み解くためのヒントをご紹介します。
テレビの言葉の選び方:『見て感じる』ための言葉
テレビのニュースは、映像や音声が中心です。そのため、言葉は映像や音響の効果を補い、視聴者の感情や感覚に直接訴えかけるような選び方がされやすい傾向があります。
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特徴:
- 短いフレーズやキャッチーな言葉が多い
- 状況を描写する際に、感情的な響きを持つ言葉が使われることがある
- テロップ(画面に出る文字)や効果音が言葉の意味合いを強める
- スタジオでの解説は、話し言葉に近い表現が使われる
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言葉の選び方による効果: 映像と組み合わさることで、ニュースを「体験する」ような感覚で受け取ることができます。速報性が高く、出来事の雰囲気を素早く掴むのに適しています。
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注意点: 感情に訴えかける言葉や映像によって、冷静な判断が難しくなる場合があります。短い言葉だけでは、情報が簡略化されすぎたり、背景や詳細が十分に伝わらなかったりすることもあります。
新聞の言葉の選び方:『読んで考える』ための言葉
新聞は活字が中心です。読者が文章を読んで、論理的に理解することを前提として言葉が選ばれます。
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特徴:
- 客観的で論理的な言葉遣いが基本
- 正確な情報伝達のために、専門用語や硬い表現が使われることもある(ただし、多くの場合説明が付く)
- 長い文章で、出来事の背景、原因、影響などを詳しく説明する
- 見出しには、記事の要点や最も伝えたいことが凝縮される
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言葉の選び方による効果: 情報を深く、体系的に理解するのに適しています。出来事の全体像や多角的な視点を知ることができます。信頼性の高い情報を得るための重要なメディアです。
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注意点: 専門用語や長い文章によって、難しく感じたり、読むのに時間がかかったりすることがあります。また、新聞社ごとの編集方針や視点によって、同じ事実でも言葉の選び方や見出しの付け方に違いが出ることがあります。
インターネット(ネットニュース、SNSなど)の言葉の選び方:『多様で速い』言葉
インターネットは、プロのメディアだけでなく、個人も情報を発信できる場所です。そのため、言葉の選び方も非常に多様です。
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特徴:
- ニュースサイトは新聞に近い言葉遣いが多いが、速報性重視で簡潔な場合も
- SNSやブログなどでは、口語的、感情的、主観的な表現が一般的
- スラング、略語、絵文字なども使われる
- 短いコメントや過激な言葉が注目を集めやすい傾向がある
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言葉の選び方による効果: 最新の情報を素早く、手軽に入手できます。様々な視点や個人の意見に触れる機会が多くあります。自分と近い感覚を持つ人の意見も見つけやすいかもしれません。
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注意点: 表現の幅が広いため、客観的な事実と個人的な意見や感情が混ざりやすいです。匿名での発信も多いため、言葉の裏付けや信頼性を判断するのが難しい場合があります。感情的な言葉や過激な表現に流されやすい傾向もあります。
言葉の選び方が情報の受け取り方をどう変えるか
例えば、ある出来事について報じる際に、
- テレビが「衝撃の真実が明らかに!」
- 新聞が「関係者への取材により、事実関係が判明」
- インターネット(SNSなど)で「まじか、これやばいんだけどw」
といったように言葉が選ばれると、受け取る側の印象は大きく変わります。「衝撃」という言葉は強い感情を呼び起こし、「事実関係が判明」は客観的な情報を伝える姿勢を示し、「まじか、これやばい」は個人的な驚きや感想を表しています。
同じ出来事でも、使われる言葉によって、それが「感情に訴えかける出来事」なのか、「冷静に分析すべき出来事」なのか、「個人的な感想を共有する出来事」なのか、といったニュアンスが変わってくるのです。
賢く情報を読み解くためのヒント:『言葉に敏感になる』習慣を
メディアの言葉の選び方の違いを知ることは、情報をより深く、そして批判的に読み解くための第一歩です。今日から実践できるヒントをいくつかご紹介します。
- 見出しだけでなく本文を読みましょう: 特にインターネットでは、注目を集めるために見出しが強く、本文がそうでもない、という場合があります。見出しだけで判断せず、本文全体を読んで言葉のニュアンスを掴みましょう。
- 「誰が」「どんな立場で」話しているか考えましょう: その言葉は、客観的な事実を伝える記者や専門家の言葉でしょうか?それとも、個人的な意見や感想でしょうか?発言者の立場によって、言葉の重みや意図は異なります。
- 使われている言葉の『強さ』や『断定度』に注目しましょう: 「〜が判明した」「〜と言われている」「〜かもしれない」など、表現の仕方で情報の確実さが違います。「〜である」「〜だ」のような断定的な表現が、本当に事実に基づいているか確認する意識を持つことが大切です。
- 複数のメディアで同じニュースを見比べてみましょう: テレビ、新聞、インターネットなど、複数のメディアで同じニュースを見て、言葉の選び方や表現の違いを感じ取ってみましょう。それぞれのメディアが、出来事をどのように捉え、読者や視聴者にどう伝えているのかが見えてくることがあります。
- 分からない言葉は調べてみましょう: 新聞などで馴染みのない言葉が出てきたら、そのままにせず調べてみましょう。正確な意味を知ることで、ニュースの理解度がぐっと深まります。
まとめ:言葉を知ることで、情報とより良い関係を
テレビの臨場感あふれる言葉、新聞の丁寧で論理的な言葉、インターネットの多様で素早い言葉。それぞれのメディアが選ぶ言葉には、それぞれの「得意」と「工夫」が詰まっています。
これらの言葉の選び方の特徴を知り、「なぜこの言葉が使われているのだろう?」「この言葉からどんな印象を受けるだろう?」と少し立ち止まって考える習慣をつけることで、あなたは情報の表面的な部分だけでなく、その背景にある意図やニュアンスも感じ取れるようになります。
情報過多の時代でも、言葉に敏感になることで、流されずに本当に必要な情報を見つけ、賢く情報を読み解く力が身についていきます。今日から、ニュースの「言葉遣い」にも少し注目してみてはいかがでしょうか。